【体験記】一期一会を痛感した小さなお客さまのお話

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これは僕が24歳の頃。

おもてなしや接客の世界で大切な一期一会の精神。その本当の意味を教えてくれた小さなお客さまのお話です。

今の僕の価値観を形作る大切な出来事で、サービスをする仕事には僕の自己紹介の意味合いも含め、ぜひ読んでいただきたい内容です。

目次

勤務していた店舗について

まず初めに、僕が店長として勤めていたお店は100席ほどのオープンキッチン型ピッツェリア。郊外にある田舎らしいのどかなお店です。

田舎の良さを活かし、地元の農家さん野菜を使用する地域密着の経営をしていました。

週末には300人を越えるお客さま、子供連れのご家族もたくさんいて、店内はいろんなお客さまの会話がBGMになるほど賑わいます。

ピークタイムの忙しさの中、ふと顔を上げた瞬間の店内。満席でガチャガチャと賑わっている雰囲気は何とも言い難い幸せを感じ、思わず笑みがこぼれます。

店内でも特にこだわっていたのが、ピッツァを焼く「ピザ場」の工夫

お子様が作っているところを見られるように小さな踏み台を設置していました。

ここは子供たちに大人気の場所で、週末は取り合い。

ピッツァカウンターの周りに子供が10人以上並ぶ日もあります。

そこで長年「店長兼ピザのお兄ちゃん」として子供たちに絶大な人気を誇ったのが・・・・

そう。私です(自分で言うな)

子供たちの目の前でピッツァを焼きながら「今日は学校で何があったの?」とお話しするんです。

それぞれの子供たちの幼稚園や学校の話、小麦粉でお絵かきもしながらピッツァの注文を焼いていきます。

なぜこんなことをするのか。これにはきちんとした理由がありました。

毎日忙しいお母さんにゆっくり食事を楽しんでほしい

小さい子供を持つお母さんは、本当に忙しい。毎日くたくたです。

そんな子供連れのお母さんが外食に来る理由を考えると、僕たちに出来ることは安心安全になるべく子供の気を引いてあげる事。

なので、手を伸ばして機材を触ろうとする子には

「それはダメー!はい、なんでダメでしょ~か?」

と遠くから見えるような大きな身振りで、きちんと注意もします。

これも他のお客様に「子供たちをきちんと見てくれてるんだな」と客席からでも安心して任せてもらえるように。

外食は普段頑張っているお母さんたちの自分へのご褒美でもあり、楽ができる場でもあります。

そんなサービスのおかげかお客さまとの距離も近く、常連様の子供たちは僕のことをまるで自分の家族のように近況報告しに来てくれるようになり、とてもやりがいのあるお仕事でした。

小さな女の子との出会い

「チリンチリンッ」

ある日のランチ営業。

入口のドアのベルが鳴ったかと目をやると、6歳くらいの一人の女の子が元気よく入ってきてピザ場の前に駆け寄ってくる。

「やったー!!Mさん(僕の名前)いた!!!今日も来たよ!!!」

・・・??いらっしゃい♪

僕はその子のことを覚えていませんでした。

しかし、僕はあまり下の名前を教えることはなかったので知ってるということは何回も来たことあるお子さまかな?くらいの予測は立てつつお話を続ける。

少し遅れてお母さんが入店。とても感じが良くニコニコ。

「○○ちゃん、お兄ちゃんに迷惑かけたらだめだよ」

と興奮冷めやらぬ状態の女の子に一言伝えて席に着く。

注文が決まり、料理が出るまでの間その女の子はずうっとピザ場にべったり。

「今日はね、お買い物に行ったの!かわいいお洋服かってもらったの!」
「Mさん!私の名前覚えてる??前お話ししたじゃん!」
「私、これが好きなの!!」

とコチラが話す間も与えぬほどのマシンガントーク。

こんなに良く覚えていてくれているのに、僕の方ははまだその子のことを思い出せず…記憶をたどりながら適当な相槌を返していた。

会話の中の違和感

〇〇ちゃんは将来何になりたいの?

と僕が質問をしたとたんその女の子は黙り込み、少し驚いて考えた後

わからない。私大きくなれないらしいんだよね・・

と小さな声で答えました。

「でも大きくなれたらお花屋さんになりたい!」

へぇ~!いいねぇ♪素敵な夢だね!

一瞬の違和感を感じながらも返事を返す。

しかし・・・その一言がどうしても気になり、帰りのお会計前にお母さんに失礼を承知で「〇〇ちゃん、ちょっと元気なかったみたいで悪い事聞いちゃったかなって・・」とこっそり伺ってみました。

驚きの事実

お母さんから帰ってきた言葉は想像をはるかに超える衝撃でした。

その女の子は重度の病気・・もう長くは生きられない状態だそうです。

そしてさらに衝撃を受けたのが

今日の来店はたったの2回目だったということ。

「ひと月前に、元気がない娘を元気づけるために初めて来たんですけど、その時の娘の喜び方がもう凄くて。。よほどお兄さんとのお話が楽しかったのか帰ってからもずっとお兄さんの話をしてたんです。あまりにもうるさいから今日も連れてきたんです。(笑) 最近元気がなかった娘の笑顔を見せてくれてありがとうございます。」

と涙ぐみながらお母さんが話してくれました。

お客さまにとって「スタッフ」はたった1人

その日の営業後、僕は初めて悔しさでボロボロと泣きました。

いろんな思いがあふれて涙が止まらなかった。

なんで僕はあの子のことを覚えてあげられなかったんだろう・・。

何百人いるお客さまの一人だから、と適当に返事してた自分がいなかったかだろうか・・。

もっと、僕に出来ることはなかっただろうか。

あの子はたった1度の会話を、僕の名前も憶えてあんなにも楽しそうにしてくれていたのに。。

その時、分かっているつもりだった「一期一会」という言葉の意味を感じ、その難しさを痛感しました。

スタッフにとっては何百人のお客様の一人でも、お客さまからするとたった一人のスタッフなんです。

その親子はその後来店されることはありませんでした。

その子が現在どうなったのか、医療の進歩で良くなっていることを心から願いたい。

最善を尽くしたからこその悔し涙

当時は女の子のことを覚えてあげられなかった自分を悔やんで悔やんで自分を責めましたが、今ではむしろ誇らしく思います。

悔しいと感じるのは毎日自分なりの誠意をもってお客さまに向かっていた証拠。

その女の子にとって1回目の来店が心から楽しい時間になったということ。

それからというもの、やはり全員の顔と名前はさすがに覚えられませんがお客さまに向かう姿勢と、その瞬間をより大切にするようになりました。

今目の前にいるお客さまは、次も来てくれる保障なんかどこにもないんです。

こんな大切で貴重な体験を教えてくれた小さな女の子に出会えたことを、今でも心から感謝しています。

最後に

長々と読んでいただいてありがとうございます。

この記事読むと自分でも毎回一瞬で泣いてしまいます。笑

飲食の仕事は長時間労働で大変で、給料も安くて・・・なんて言葉をよく耳にしますが、ひとこと言わせてください。。

その通りですよ?笑

否定はしません。

ですが、人間は厳しい環境下で試行錯誤した経験が知識にも勝るスキルに代わり、歯を食いしばっている中での出会いがその後の人生を作るのです。

全ては働く人のとらえ方だと思いますね。

サービス業・接客業に携わる方に少しでもなにかを感じていただけると幸いです。

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